ベイスターズとスポーツ界を勝手に見守るブログ

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捕手の分業問題

「正捕手がいない」、近年そこまで言われることは減ったかもしれませんが、一時期そういう声が多くなりました。

たしかに一人の捕手が年間全試合出場することは少なくなった気がしますが、本当にそうなのかそしてそれは勝率に影響するのか簡単に調べてみます。


昔は多かったといってもそんなに大昔の話ではありません、大体話に挙がるのは20年前程度のことでしょう。

平成の正捕手として良く名前の挙がる阿部、古田、城島、谷繁、伊東…彼ら一部の大選手のインパクトが強い故に「昔は多かった」と言われている可能性もあるのでは無いかと思います。


まずは今年2019年で主戦捕手が決まっているチームを見てみます。(すみませんが主観です)

広島(會澤)、横浜(伊藤)、阪神(梅野)、ヤクルト(中村)
ソフトバンク(甲斐)、西武(森)、日ハム(清水)、オリックス(若月)、ロッテ(田村)、楽天(嶋)

パリーグの方が多く名前が挙がりますので、近年のパリーグ優位はもしかしたらこれも理由のひとつかもしれません。
そもそも一時期よりは正捕手の数が増えている気もしますね。


次に捕手の分業度を昨年2018年と1998年とで比較してみます。そしてその後に分業度と勝率についても見てみます。
ここで分業度の定義が必要ですが、当然ですが仮にに同じ四人でも140:1:1:1と30:40:50:53とでは後者のほうが分業が大きいといえます。

ここではシンプルに各チーム捕手の出場試合数の標準偏差=散らばりで分業度を表現します。
大きいほど捕手起用に偏りがある=より分業度が低く正捕手固定されている、という形です。

▼2018 ()内は勝率、続けて最多出場捕手※年143試合
西武 16(.624) 森81試合
ソフトバンク 48(.577) 甲斐133試合
日本ハム 38(.529) 鶴岡89試合
オリックス 44(.471) 若月114試合
ロッテ 54(.421) 田村143試合
楽天 37(.414) 嶋112試合

広島 38(.582) 會澤103試合
ヤクルト 44(.532) 中村123試合
巨人 45(.486) 小林119試合
横浜 30(.475) 嶺井90試合
中日 30(.447) 松井91試合
阪神 48(.440) 梅野132試合

パリーグ優勝した西武が圧倒的な勝率ですが、捕手はもっとも固定されず併用されていました。散らばりは16と最も低いです。最多出場は森の81試合、岡田と炭谷がそれぞれ50試合弱とかなり均等に試合出場をしていました。
とはいえ森は打撃力からDHで出ることも多数ありましたので捕手として以上の貢献度があったことは間違い有りません。

反対に1番正捕手が固定されていたのがロッテ。田村は全143試合に出場しました、立派なことです。ただしチームの勝率は0.421と低調な結果に終わってしまいました。
ソフトバンクは甲斐、オリックスは若月がそれぞれ100試合以上の出場でほぼ出場しておりかつばらつきとしては近いですが、勝率にはやっぱり差があります。

セリーグは全体的に捕手の併用が目立ちます。1番固定されているのは阪神ですが勝率は最下位です。

当たり前ではありますが、西武森、広島會澤と捕手の中で優れた打撃力を残したチームが好成績を残しています。
捕手が打てば良いという単純なものではありませんが、他チームが低い成績のポジションで高い成績が残せればそれだけでアドバンテージになることもまた間違いの無いところです。「打てる捕手」と良く言われますが、それは同時に打撃成績以上に相対的なプラスが見込める大きなポイントであるのです。


▼1998
西武42(.534) 伊東110試合
日本ハム39(.508) 野口107試合
オリックス32(.500) 三輪77試合
ダイエー40(.500) 城島106試合
近鉄37(.496) 的山104試合
ロッテ17(.462) 吉鶴83試合 

横浜59(.585) 谷繁133試合
中日48(.556) 中村128試合
巨人36(.541) 村田106試合
ヤクルト58(.489) 古田132試合
広島41(.445) 瀬戸120試合
阪神41(.385) 矢野109試合

こう見るとやっぱり個性的な面々が多いような気もしますねw
パリーグセリーグともに最も捕手の固定されている西武と横浜が優勝しています。

パリーグについては2018年と標準偏差も近く、捕手の固定具合自体には大きな変化は無いように見えます。ただ、最も固定されたチームが優勝で最も固定されなかったチームが最下位ということで冒頭のイメージに繋がっているように感じます。

セリーグは少し傾向が異なり、全体的に1998年のほうが捕手固定がなされていました。ただし古田を擁するヤクルトが4位に終わっており固定するほど上位という形ではありません。


以上のことから仮説を2点ほど考えてみます。
①固定優先の時代では無くなっている
→捕手固定のメリットは味方投手や相手野手の情報を正捕手が一括で担えることです。以前は伊東や谷繁などクレバーな選手が担うとこでチームの勝利に繋がる舵取りをしてくれていたかと思います。ただ、今の捕手も彼らより劣ったと一概には思いません。
まず現代については投手球数や球種の増加、作戦の多様化などより情報量が増えたと思います。また、各球団戦略担当を置くことでこれまで捕手がやっていた役割の一部をベンチが担えるようにもなっています。そのため、そもそも傾向や情報収集のためという目的で捕手固定をするメリットが減っているでは無いでしょうか。
あとは固定のメリットよりも、コンディション管理やチーム危機管理のためにも複数選手の起用をしていくことがある程度優先されているのかも、しれません。

②固定することよりも重要なのは、相対的に優れた面のある選手をたくさん起用すること。
→当たり前ですが重要です。もちろん成長のためにはたくさん試合に出ることも必要ですが、その過程においてもまずは何かストロングポイントのある選手を使いたいところです。
現代では森や會澤の打撃、甲斐や小林の肩などは「大きなストロングポイント」だと思います。今年でいえば巨人は炭谷の経験、大城の打撃、小林の肩と各自メリットのある選手をうまく回していると思います。
そういう意味では、例えばカープは坂倉や中村といった若く同世代の中で優れた面のある選手が在籍していますので近い将来がまた楽しみです。


これまで身体能力の高いアマチュア選手はだいたい投手や外野手をやるケースが多かったと思います。確かにその選手の魅力を最大限引き出し勝利に繋げるためにはその方が良いのは間違いありませんが、プロの世界で身体能力の高い「捕手」なんてものが登場したらほんとに夢があると思います。もったいないけど大きなアドバンテージでもあるわけですから。

そのような夢を見つつも、現実的なところではドラフトにおいて一芸に秀でた選手を獲得することが面白いのではと考えます。スイングが早い、スローイングが早い、捕手なのに足が速い…などなど何でも良いです。
ソフトバンクなどは三軍制度も充実しておりそういった戦力整備が可能ですが、通常は経営的にも難しくある程度完成度のある選手を求めるのが普通です。

ただそこで敢えて他との差をつけるために捕手に関して面白いドラフトをする球団があってほしいなと思います、あわよくばそれがベイスターズであることを願う次第です。


ありがとうございました。